「後期印象派·考－1912年前後を中心に」連載をめぐって

서지정보

ㆍ발행기관 : 한국미술연구소 ㆍ수록지정보 : 美術史論壇 / 31권
ㆍ저자명 : 田中淳

영어 초록

わたしは、『美術研究』（東京文化財研究所発行）に、1997年12月から2006年12月まで、5回にわたり、表題にある論文を連載した。この論文の目的は、日本における“The Post Impressionists”絵画の受容の問題であった。
本誌掲載のわたしの小論では、第一章において、この受容の問題を考察するにあたり、1912年を中心に横断的に、言説と視覚的イメージという二つの面から検討してみたので、これを要約しながら、問題点を指摘した。つぎの第二章では、この連載中から現在までの間に、翻訳語として 「後期印象派」という用語が、“Post”を 「後期」と翻訳したことが誤りであったという指摘をうけて、近年、使用されなくなった。この事情を、研究史として検討してみた。

1. 「後期印象派·考―1912年前後を中心に」について
ここでは、まず言説の問題を、1912年前後に活躍した、キーパーソンともいえる若い芸術家たちの発言をとおして考えてみることにした。東京美術学校の学生であり、詩人であった川路柳虹（1888－1954）、美術批評をはじめたばかりの木下木太郎（1885－1945）と画家山脇信徳（1886－1952）、文学雑誌 『白樺』（1910年創刊）のメンバー武者小路実篤（1885－1976）との三者の間で交わされた、いわゆる 「絵画の約束」論争。この論争を武者小路の側から援護した柳宗悦（1889－1961）の 「革命の画家」（『白樺』1912年1月号）、そして青年画家の一人としてばかりでなく、まさに1912年から積極的に翻訳、紹介記事を雑誌などに発表した木村荘八（1893－1958）等である。
つぎに視覚的イメージの受容を考えるにあたり、異文化を 「受容」するにあたって、「受容」する側の主体性に目をむけることにした。それによって、元のイメージを 「受容」する際に、模倣、影響だけではなく、増幅、拒絶、逸脱などの現象もありうるという原則論にもとづき、個々の作品をみていった。ここから明らかとなったのは、1912年当時、ゴッホがの原色でギラギラと輝く 「太陽」のイメージの複製図版で、目にすると直接的に模倣する場合もあった。
一方で、東京の夜空に輝く薬の広告イルミネーション 「仁丹」を描いてもいた。この 「太陽」と「仁丹」の両方に象徴されるイメージこそが、日本における“The Post Impressionists”絵画の受容の多様性、複合性であると結論づけた。

2. 美術用語（Term）としての 「後期印象派」―研究史にかえて
“The Post Impressionists”絵画が、複製図版ながら、視覚的イメージをともなって日本に輸入されたのは、1911年の暮れのことであった。その後、この“The Post Impressionists”は、様々な日本語訳がつけられてきたが、1913年頃から1990年代まで、「後期印象派」が一般に使われてきた。
しかし、美学研究者である神林恒道氏が、その著作 『美学事始 芸術学の日本近代』（勁草書房、2002年）において、「Post‐Impressionists は正しくは、「印象派以後」あるいは「ポスト印象派」と訳されるべきでものであろう。」（同書、132）と指摘された。また2002年9月から11月にかけて開催された 「モネからセザンヌへ 印象派とその時代」展 From Monet to Cezanne: Impressionists and Epoch（秋田県立近代美術館、埼玉県立近代美術館）カタログにおいて、宮崎克巳氏が論文 「セザンヌから20世紀絵画へ―自然·内面·絵画」中で 「後期印象派」が 「誤約」であると指摘した。その後高階秀爾氏が、「美の現在 『後期印象派』は誤約 内面の描写目指す次の動き 正確には 『ポスト印象派』では」（『朝日新聞』 2003年6月4日）を発表し、同展覧会をとりあげながらこの問題に言及した。これ以後のことだろうか、書籍、カタログ等から 「後期印象派」の言葉は、まったくといってよいほど使用されなくなっているようにみられる。こうした動きのなかで、現在、日本国内では、西洋近代美術では 「ポスト印象派」が多く使われるようになり、日本近代美術を取り上げた著作、展覧会では、「ポスト印象派」、「後印象派」、そして引用文献では、「後期印象派」が使われるというように、用語の使用に揺れが生じているのが現状である。

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